「もしも○○になれていなかったとしたら、今何をしてたと思いますか?」
ドキュメンタリーなんかでは良くある質問ですよね。
漫画家・あだち充先生も、とあるインタビューでこの質問をされています。
その回答があまりにもかっこいいので紹介したい!
やっぱりこの人は漫画家になるべくしてなったんだなーと思い知らされました。
今回はそんなお話です。
あだち充を知っていますか?
「あー、タッチの!」とか「H2の!」とか、
「クロスゲームの!」とか「MIXの!」とか、
人それぞれ、世代それぞれいろんな答えが返って来そうなのがあだち充。
約50年も漫画界の最前線を走り続けているレジェンドです。
沢山の名作を送り出し続けているあだち先生ですが、
「登場人物の顔が見分けられねぇよ!」「全部同じ顔じゃん!」なんて意見もしばしば。
大丈夫です。関係ありません。だって、面白いので。
ちなみに、あだち先生ご本人もわからないらしいです。笑
(↓少年サンデー公式からも、クイズを作られていじられるあだち先生)

でも、各作品の中では完璧に描き分けられていて、全く違う名前のキャラクターとして登場人物がいきいきと動き出します。そしてそのどの作品もとにかく面白い。
全部が面白いってすごいですよね。
あだち充の余白がすごい。
あだち充の良さは「余白の美しさ」だと思います。
説明的なセリフを省いて、空中戦のような会話をして、時にはただ景色を描くだけで心情を伝えてしまう。小説のような余白がなぜか熱くさせる。
わかる人にはわかると思いますが「H2」の木根のガッツポーズなんてほんと伝説ですよね。一番肝心な場面は喫茶店の小さなテレビの中に収められ、その前を人々が行き交うというリアルさ。

漫画「H2」より
このため息の出るような美しい余白があだち充作品の主成分です。
そういえば、近年ぶっちぎりで大ヒットした漫画「鬼滅の刃」では主人公・炭治郎が死ぬほど内なる声を言葉にしていますよね。特にアニメだと心の声を全部、花江夏樹さん声に出して喋ってて…
作者の伝えたいことが、直接的にわかりやすく説明されすぎている気もするけど、その方が良いのかな?
木根のガッツポーズと比べると、やっぱり文字の説明が際立つ。

「俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった!」
漫画「鬼滅の刃」より
まぁどちらが良いとかではなく、大事なことを漫画の中で文字にしていないのに、文章で説明されるよりもっともっと伝わってくる。そんなあだち作品が超好きだというお話です。
もしも漫画家になっていなかったら。
以前、あだち充本という本が出版されていたのですが、そのロングインタビューがめちゃくちゃ面白かったです。あだちフリークにはぜひ手に取ってみてほしいので、そのお話を少し。

あだち充はお兄さん(あだち勉)も漫画家で、デビュー前から漫画雑誌の一般投稿欄の超常連の「群馬のあだち兄弟」として有名だったんですよね。
そのまま学生のうちに上京し、ラブコメの先駆け「みゆき」や最高傑作(と僕が思っている)「ラフ」とヒットして、キャリア初期に「タッチ」という国民的漫画を大ヒットさせるという。
初めから漫画家になることが決まっていたかのような破竹の勢いブレイク。で今の今まで漫画界の最前線を走り続けているんです。
そんなあだち先生にインタビュアーが尋ねたのが、
「もしも漫画家になれていなかったとしたら、今何をしてたと思いますか?」
皆さんならなんて答えますか?
「普通にサラリーマンかなー?」とか、漫画家に近い仕事で「編集者になるかなー?」とか、はたまた「学校の先生かなー?」とか全然ちがう職業を答えてみたり?
普通はそういう回答になりますよね。
でも、あだち先生の回答は違いました。衝撃です。
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「もしも漫画家になれていなかったとしたら、今何をしてたと思いますか?」
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「売れない漫画家ですね」
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痺れますよね。こんなの。鳥肌立ちすぎて鳥になりそう。
なんというか、読者が想像するあだち作品のセリフ回しそのものです。
あだち作品の登場人物が言ってそう、てか絶対言ってる。遠い目で言ってる。
売れようが売れまいが漫画が好きで漫画家になりたいという想いは一切ぶれない。
それをほんの少しのウィットにまぶしながら、さらっと口にする。
なんか面白いけどグッとくる感じ。
こんなかっこいいこと言ってみたいですよね。
あーあ。あだち先生の魅力、伝えられたかなぁ?
100分の1も伝えられた気がしないなぁ。
でも少しでも気になった人は、あだち充 読んでみてくださいね。是非に。